工藤元（kudogen）　脚本『ウザい男と笑わない女』　○山村家・寝室（3年前・夜）

幸一、ダブルベッドの上で、背もたれにもたれ、スポットライトの灯りで読書している。

霞、化粧台の前で椅子にすわり、鏡を見ながらブラシで髪を梳かしている。

霞、幸一の方に振り返る。

霞「ねえ、私、やっぱり病院に行こうと思ってるんだけど」

幸一、本に目をやったまま。

幸一「病院？どこか悪いの」

霞「そうじゃなくて・・・」

幸一、苛立ったような口調で。

幸一「子どものこと？この前言ったじゃない、すぐにできるもんじゃないって」

霞「でも、そろそろ私30歳になるし、検査だけでもしておこうと思って。」

幸一「だったら行ってきなよ、それで気が済むならさ。」

霞「今度の土曜日、一緒に病院行ってくれない？」

幸一、本を置いて、手をひらひらと振る。

幸一「いや、俺はパス、パス。今度の土曜はゴルフだし、そもそも病院嫌いだって知ってるだろ？もう寝るよ、おやすみ」

幸一、欠伸をするとベッドに横になる。

霞、何も言わず、ブラシを両手で握りしめ、幸一を見つめる。