工藤元(kudogen)はてなブログ

工藤元(kudogen)。1990年生まれの31歳。大阪府在住。 映画・ドラマが大好きで、年間200タイトル以上を視聴しています。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・居間(現在・夜)(4)

幸一「ごちそうさま、ママ。それじゃ、後は書斎で一人で飲むとするかな」

幸一、棚からウイスキーとグラスを取り出し、手に持って居間から出る。

 

美智子「さて、年寄りもお先に失礼しますよ。霞さん、洗い物よろしくお願いしますね」

霞、俯いたまま小さくうなずく。

 

美智子、パタパタと足音をたてて居間から出ていく。

霞、誰もいなくなった居間で、一人で食事を続ける。

霞、3年前を回想する。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・居間(現在・夜)(3)

幸一「ママ、最近はいろいろ大変なんだよ。知ってる?マタハラって」

美智子「何?マタハラって」

幸一「マタニティ・ハラスメントの略。妊婦様には冗談も言えない時代なんだよ」

 

幸一、お猪口をぐっと飲み干す。

幸一「この前なんか部長がさ、2回目の産休取ろうとしたOLに、また孕んだか、いや、これマタハラか?なんて自分で言っちゃってさ。洒落になんないよ」

幸一、美智子、声を上げて笑う。

 

幸一「笑っちゃうよな、霞。」

霞、答えない。

幸一「なんだ、ノリが悪いなー。霞も笑えよ」  

 

霞、幸一を見て口角を上げるが、顔が引きつりうまく笑えない。

幸一「あーあー、霞は最近とみに無愛想だね、酒が不味くなるよ」

幸一、音を立てて箸を皿の上に置く。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・居間(現在・夜)(2)

美智子、新しいつまみの入った皿を食卓に置き、椅子に座る。

 

美智子「そういえば、こうちゃん、従妹の詩織ちゃん、また妊娠してるんだって」

幸一「え、この前2人目産んだところじゃなかったっけ?」

美智子「そうなのよ。できるところには何人もできるものなのよね」

 

美智子、霞の方に目をやると、小さくため息をつく。

美智子「霞さんにも子供ができればねえ」

霞、びくりと肩を動かす。

 

美智子「霞さんは、本当に、こうちゃんみたいな、いい旦那さんをもらったものよね。昔は嫁して3年子なきは去れ、なんて言ったものだけど」

幸一「母さん、それは言わない約束でしょ。なんてね」

幸一、おどけたように笑う。

 

幸一「たまたま霞が子供ができにくい身体なだけで、こういうのは授かりもなんだから。無理しなくていいんだよ」

美智子「まあ、こうちゃんは優しいわね」

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・居間(現在・夜)(1)

○山村家・居間(現在・夜)

 

食卓には、様々な種類のつまみが入った小鉢が沢山並んでいる。

幸一が椅子に座り、赤い顔をして、お銚子を傾けてお猪口にお酒を注いでいる。

美智子、台所で何かを調理している。

 

幸一「おう、霞。今帰り?さすがエリートサラリーマンは違うね」

霞「ごめんね、遅くなって」

霞、食卓の椅子に座る。

 

幸一、肉じゃがを箸でつまんで口に入れる。

幸一「うん、美味い!やっぱり肉じゃがはママの手作りが一番だね。」

 

美智子、幸一を振り返り目を細める。

美智子「こうちゃんは、小さい頃から私の肉じゃがが大好物だものね。」

霞、何も言わずに俯いて箸を取る。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・玄関(現在・夜)

霞「ただいま帰りました」

 

家の奥から、山村美智子(59)が玄関に姿を現す。

美智子「お帰りなさい。ずいぶん遅いのね」

霞「申し訳ありません、忙しい時期で残業してきたので」

美智子、ふん、と鼻を鳴らす。

霞の目じりが痙攣する。

 

美智子「私の頃は、食事の支度をして夫の帰りを待つのが妻の務めと習ってきましたけどね」

霞「すみません、これから支度します」

美智子「もう私がやりましたよ。こうちゃんを待たせる訳にいかないでしょう」

 

美智子、くるりと踵を返して廊下を歩いていく。

霞、鼻の付け根を指で挟み、目を瞑る。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○山村家・外(現在・夜)

○山村家・外(現在・夜)

 

古くて大きな一軒家。

 

霞、家から少し離れた場所に立っている。家を見上げた後、左胸に右手をあてる。

しばらく目を瞑った後、目を開けると大きく息を吸い、家に向かい玄関の扉を開ける。

工藤元(kudogen) 脚本『ウザい男と笑わない女』 ○オフィス(現在・朝)(3)

宏和、同僚男性の肩をポンと叩くと、霞の席の前まで歩く。

 

宏和「山村さん、おはよう」

霞、小声で。

霞「おはようございます」

 

宏和「どうした?元気ないんじゃないか?」

霞「・・・そんな事ありません」

霞、PCのキーボードを打ち始める。

宏和、しばらく黙って霞を見て、頭をかきながら反対を向き、霞の元を立ち去り自分の席に向かう。

 

同僚男性が、同僚女性に小声で話しかける。

同僚男性「こっちは逆だね、山村さんが笑わない女なら、勝田さんはさしずめ、ウザい男ってとこかな」

同僚女性「ほんとほんと、勝田さんのおせっかい、ウザいよね~髪型の話なんて、いまどき下手すりゃセクハラだって、セクハラ」

同僚男性と同僚女性、顔を見合わせて小声で笑う。